オペラ・レポート Opera Report
ザルツブルク音楽祭「フィガロの結婚」 2011年7月 (Y.Y様)
「フィガロの結婚」は誰もが認める傑作で、私も大好きなオペラです。と言っても、今回、音楽(ロヴィン・ティチアーティ指揮エイジ・オブ・エンライトゥンメント管)には全く期待しておらず、「ザルツブルクでフィガロを」というベタな思考とクラウス・グートの演出観たさから、チケットの手配をお願いしました。
ティチアーティはもじゃもじゃ頭の若手で、序曲から大爆発。ゆったりとしたテンポの中で、ティンパニが轟き、ブリュッヘンやアーノンクール顔負けのしつこい響きが続きます。フィガロとスザンナが出てくると、テンポはいよいよじっくりしたものに。円を描くような指揮で、たっぷりと歌わせます。時にもたれることもありましたが、やりたい放題やっているので、「まあ、いいか」ということに。歌手がビブラートをかけないのは、二重丸。特に女声が見事。古楽器最大の功績です。「ケルビム」が登場するクラウス・グートの演出は、シックかつクール。この演出も、アーノンクール&ウィーン・フィルのプレミエ時にはかなり話題になりましたが、今ではすっかり「古典」の佇まい。初演時の衝撃こそ弱まりましたが、後世に残る名演出といってよいでしょう。ティチアーティの指揮がよかったのは、後半の3・4幕。テンポがよく、流れがよく、歌手も絶好調(特にフィガロ)。4幕の深い祈りと、怒涛のような終結は、素晴らしいの一言。ティチアーティさん、あなたを侮っていました。ゴメンナサイ。
レポートを、お寄せいただき、ありがとうございました。